第37話

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「あんたが今言ったとおり、突き落としたなんて噂を立てられちゃ困るだろ。あんたと綾が反目してんのは周知の事実なんだ。ここに居ないほうがいい」 ハナエが口早に告げた。 「そうですね……。では、後を頼みます」 都季はハナエをうまく騙せたことに安堵しつつ、逸りそうになる足で二階へと戻った。 *** 「綾が階から落ちた?」 医者・白英宗の元へ部屋付きが駆け込んできたのは、塾から朝稽古の琴の音が響きはじめた頃であった。 娼家に着くと、白英宗を待ちわびたハナエが軒先に出ており、綾の部屋まで案内された。 ハナエは綾の体を案じているらしく、部屋までの道のりに、腕や腰を強くぶつけているらしいことを述べたが、刑部長官に嫁ぐことが決定したということも、強調して述べた。 おそらく、それを告げたのは、"はじめから存在しない"胎児の消失を案じた故であろう。
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