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「佐原くんは自信があるの? 彼女の二十八年間を、ぜんぶ消されたらどうするの?」
「いつかまた、振り向かせる。彼女の二十八年間、全部もらうつもりで、側にいる」
「結婚したら? そうなったら?」
「させない。そしたら、式の前に攫いにいくよ」
冗談と真顔と半分ずつ、そんな表情を浮かべる碧惟に対して、理奈は感服したように背もたれに身を預けた。
「とんでもない人ね。それが彼女の幸せかどうかなんて……分からなくても?」
「そうだね。でも、俺にしか出来ないことがあるはずなんだ……うまく説明つかないけど」
「……きっとあるわ。だから、羨ましくて……悔しかった。どんな風に傷ついたって……あたためてくれる場所があるんだもの。でも、だからって森下さんが嫌いなわけじゃないの」
「知ってるよ。チーフを支えるために頑張る。それが、俺たちの仕事でしょ」
自分にしか出来ないこと――他人からすれば根拠のない自信かもしれない。
けれど、碧惟の決心は揺らぐことはなかった。
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