ep1.エンドロールの、君

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『遅かったねぇ…二人とも。お祭りは楽しんだかい?君達の浴衣、とても似合うね。』 かすかに月明かりが、視界に『彼』のシルエットを映してくれる。そして花火が夜空に咲く度に、彼の柔らかな笑顔が見える。 由加里は私を自分の後ろに少し下げ、一歩前に出る。彼女は、真っ直ぐ彼を睨み付けている。顔は全く笑っていないのに、いつもの口調で彼に答えた。 「ごめんねー、林檎飴食べてたの。この子がどうしても食べたいって言うからさー。数十分くらい遅刻にならないでしょ?男なら待ってなさいよ。」 『あはは…!それは失礼。最期の晩餐かな?』 彼は微笑みながら、そのもっと奥に秘めている『本当の楽しみ』を期待するような、こちらの血の気がスーッと引くほど不気味だった。 「早く、渡しなよ。」と、由加里は持っていた巾着バッグを彼の足元まで投げた。きっと、本当は顔でも急所でも狙えたのに、私がいるから守ってくれているのかな…。 こげ茶色のかごに、薄紫色の蝶々柄のちりめん生地が巾着になって、くっついたような形の少し大きなな由加里の巾着。 ─私は、その『中身』を知っている。
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