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もう目はあまり見えない。
すっかり耳も遠くなってしまった。
「父さん! 父さん!」
これは息子の声だ。
戦争が終わった年に生まれたこいつももう五十歳だったかな。
そう思うと俺も随分と歳を取った。
あぁ。今までの思い出が次々と頭に浮かんでくる。
俺ももう長くないということか。
やっと死ねるんだな。
今までの人生、とても辛かった
というのも俺は本来ならここにいる人間ではない。
既に死んでいる人間なのだ。
しかし今も生きて、死の間際までこうして声を掛けてもらえている。
おかしな話だ。
俺は家族に囲まれて泣かれながら、幸せだったと死んでもいい人間ではないというのに。
恨まれていてもおかしくない人間だというのにーー
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