バーミリオンの天使

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どうするべきか、決めていた。あの少年と出会うまでは・・・ 昼下がりの午後、蒲田の商店街は活気に溢れていた。連ねた飲食店からは、自分のお店に誘うかのように、おすすめ料理の香りが換気扇から流れてくる。しかし、私はこの香りを受け付けることができない、むしろ、拒絶反応を起こして今にも吐きそうだ・・・ 会社を休んで、病院で検査を受けた帰り道、そんな商店街を、私はふらふらと歩いている。 予定外の出来事だった。 あいつになんて伝えようか、そのことを考えると、駅までの風景は蜃気楼のようにぼやけて写っていた。 もしかしたら、という話を電話でしたとき、あいつは明らかに態度を変えた。 「落ち着いて、まず検査に行ってから考えよう」 思い切った決断をしてくれるのかと、思っていた自分が馬鹿だった。あいつはまだ会社に入ったばかりで、結婚のことなんか考えていない。 京浜急行の蒲田駅に着いたとき、ちょうど電車が到着した。私は車両の一番端、向き合っている座席に座った。この場所は、直ぐ横を見るだけで、外の風景を見ることが出来るから好きな場所だ。
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