プロローグ

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プロローグ

この世の中で『嘘』をつけるのは人間だけだって、何かで読んだ記憶がある。 もちろん動物や植物や、もしかしたらミトコンドリアだって生きる為の本能で、そうした事に近い行動をするモノだっているだろう。 けれども他人を欺く為に微笑みを浮かべたり、誰かの気をひく為に悲しい表情を浮かべたり、そんな事が出来るのは人と云う生き物だけだ。 その事をあざといと言ってしまえば、それまでなのだけれど、それで物事が円滑になるなら決して悪い事じゃない。 多かれ少なかれ人は嘘をつくし、其れは僕だって同じなのだから他人を責める事なんて出来る筈はないのだ。 そんな事を考えてしまうのは、僕が病んでいるからでも、世の中に不満があるからでもない。 僕の憂鬱は、極めて私的で厄介な僕自身の問題なのだ。
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