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ケーキを食べ終え、私が後片付けをしている時だった。
彼に抱きしめられたのは。
後ろからふんわりと包む彼の薫り。
あの人と同じ。
色んな思いやあの日の情事が駆け巡り、私はその薫りだけでクラクラとなる。
「離して」
「外はダメだって言ったけど、中はダメだって言われてないよ?」
からかうような口調で、さっきのことを逆手に取る。
「満たされない時だけでもいいから。オレのこと、相手にして?」
それは、確かに心の奥底で巣食ってる打算的な思いと合致する。
だけど。
「……ダメだって」
私は彼にそこまでしてもらえるようなオンナじゃない。
「いいって。オレがアカネちゃんのそばにいたいだけだから。邪魔しないから」
彼は私をくるりと向けさせると、唇を当てて軽いキスをし、私の手を取る。
触れられた部分から伝わる微熱。
もうそれだけで、私のはしたない水分はじわじわと溢れていく。
そのままベッドのところに連れられ、先に座った彼に引っ張られるようにして、彼の間に腰を下ろした。
「こないだはアカネちゃんと繋がりたいばっかりで余裕がなかったけど、」
私の後ろから囁くように告げる。
吐息が首筋にかかって、それだけで下の口からじゅくりといやらしいものが出てくる。
そして、彼は言葉を続ける、
「今日はアカネちゃんを気持ちよくさせてあげることが目的なんだ」と。
宣言するように言った後、後ろから私の顔を覗き込むと、唇を押し付けた。
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