第一章――――災厄の知らせ

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 ナイツ夕桜支社は、巨大犯罪組織ナイツ配下にある支部の一つである。元々夕桜市内にあった二つの支部を統合し生まれた新しめの支部であり、現在の所属メンバー数は七十一人。規模としては中堅クラスだが、統合後僅か数年で他の大規模支部とほぼ同等のノルマを達成している。支社の名称は、特に功績が大きく、一定以上の権限を認められた支部にのみ与えられるものである。  そのアジトは、夕桜市の北区と南区の境目――ゆざくら南通りから裏通りへ逸れた先にある、目立たないオフィスビル風の建物だ。その、地下三階。そこに、“彼女”の部屋はある。  地下階への階段は通常時は閉鎖されており、エレベーターのボタンも地下二階までしか存在しないため、三階より下へは、特定のメンバーだけが知る隠しコマンドをエレベーターの操作パネルに入力しなければ立ち入ることはできない。アジトの中でも、特別に機密性の高いエリアといえる。  その地下三階の廊下を、一人の少女が歩いていた。右手に紙袋を携えた、赤髪の少女――志野美夜子(しのみやこ)は、ある部屋の前で立ち止まり、扉をノックする。
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