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佐谷さんは何度か深呼吸を繰り返しながら何かをブツブツ言っていたが、よく聞こえなかったので落ち着くまでそっとしておくことにした。
「……すみません相楽さん、急に取り乱したりして」
「い、いえ、別に」
しばらく経って漸く口が利けるようになると、佐谷さんは俯きながら皿を受け取り、リゾットを口に運んだ。
分からない。佐谷さんの考えていることは、やっぱりよく分からない。
その後、先程の様子を問い詰めてみると、とりあえず悪い意味はないということでこの件は納得することにした。
僕は彼が食べ終わるまで水を汲んだり薬の準備をしたり諸々の世話を焼いていた。佐谷さんは皿の中のリゾットを見事に全部平らげた。
佐谷さんが薬を飲んだのを確認すると、僕はキッチンへ戻って鍋に残ったリゾットを皿に移した。
さすがにお腹が空いていたので、自分の分を含めて少し多めに作っていた。今から自宅に戻ってもスーパーはもう閉まっている。コンビニの弁当はあまり好きではないので、彼には申し訳なかったが、ここで夕食を済ませて帰るつもりにしていた。
洗い物を済ませて、使った食器を布巾で拭いた。明日の朝起きた時にすぐに食事が採れるようにと、鍋に出汁を作ってコンロの上に置いておいた。コンビニで買ってきた冷凍うどんを茹で、塩昆布を乗せればとりあえず空腹は満たされるだろう。
元々生活力のある彼のことだから、ここまでしておけば大丈夫だ。一晩眠れば少しは良くなっているだろうし、ひとまず心配はないと思う。
「それじゃあ佐谷さん、僕はこれで」
全ての支度を終えて部屋を覗くと、薬が効いたのか佐谷さんはぐっすり眠っていた。
試しに近付いてみたが、彼は全く起きる気配がない。
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