願い事ひとつ

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もうすぐ七夕 町の小さな代理店は イベントの手配でパンク状態だ 今週いっぱい雨と天気予報は謳っているがホワイトボードに書き出された予定表を見れば 野外のイベントが際立ち 一抹の不安を感じた 真向かいの席に座る清水は 長年つき合っている男が居るらしいが その影を感じたことはない 「今週は、ずっと雨らしいよ」 ガラス越しの梅雨空を見上げながら 話しかけてみる 「ふぅーん」 「なんも予定ないの?」 「特に…」 「彼氏と別れた?」 「特に…」 「…きいてる?」 「どうでしょうか」 食えない女… 最初はそんなふうに思ってた 「そろそろ別れたら?」 「ご提案ありがとうございます」 「どうせ、連絡ないんだろ?」 「………。」 ほらな。 そんな寂しそうな顔するくらいなら 別れてしまえばいいのに
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