願い事ひとつ

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「創、急ぎの仕事で悪いんだけど頼めるか?」 この蒸し暑いのに、スーツをピシッと着たこの男は涼しげに笑った 「…お前、暑苦しい。 上着脱げよ」 「それよりさ、香織ちゃんは?」 「暑苦しい男が近づく前に逃げ出したんじゃないのか?」 「そんな事言うなよ。 俺、営業なんだから仕方ないだろ?」 ムカつく位涼しげでキレイな顔をした北崎は顔に似合わず腹黒い 「で、急ぎの仕事って何?」 「そうそう、これ」 ポンと渡された角型の封筒は分厚く重い 資料を一枚掴みとり見てみると フラダンスコンテスト… 「そんな難しそうな顔するなよ 駅西口の再開発ビルでビアガーデンしてるだろ? あそこの夏祭りのイベントだよ フリーペーパーと、テレビCMに出す分のデータ急ぎで作って」 デザイン事務所に出すほどの予算が無かったり 急ぎの物件が大抵俺に舞い込む 「いつまで?」 「出来れば、明日朝一で先方に校正出ししたい」 「ん。」 「なぁ。香織ちゃんってオトコと別れてないの?」 また、清水の話か… 「あぁ。そーみたい」 「別れればいーのに あの子、プライベートの誘いは、絶対断るんだよねー」 「そりゃそーだろ」 自分に自信があるんだろう 北崎は、靡かない清水を手に入れてみたいだけだ 本当に欲しい訳じゃない  
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