才女の幼少期

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天馬 鹿江(テンマ シカエ) 、大手出版社の記者。 人は彼女を才女とか天才と言う。 彼女の才女ぶりは幼少の頃より既に始まっていた。 3才になる頃には二つ上の姉を差し置き、幼児向け雑誌を読みこなし、小学校を卒業する頃には中学生の学習範囲を終えていた。 鹿江の母は、鹿江が小一の時の個人面談で、 「とんでもない知能指数です」 と、担任に言われた事を今でもハッキリと覚えていると語っている。 そして、中学での個人面談では 「すみませんが、音楽と美術は4をつけさせて下さい。他の生徒にも5をつけてあげたいので」 と、言われたようだ。 勿論、高校生になってもそれは変わらず、最高学府へと現役合格を果たし、厳しい就職試験を突破し出版社へ就職する事になったのだ。 かと言って、けして彼女はがり勉タイプではない。 おしゃれや遊ぶ事にも人並みに、いやそれ以上に興味があった。 中学生になった頃には、毎月二冊のティーンファッション雑誌を購読し、気に入った服があれば隣県まで買いに行った。 大学生の頃には、身長168㎝ 45㎏の体型を生かし、着物モデルのアルバイトやバーのウエイトレスのアルバイトもしていた。 友人も男女問わずいたし、少人数でもなかった。 此だけ読めば、とてつもなく完璧な女に思うだろうが、彼女にも弱点はある。 鹿江は、憐れなほどに運動神経が良くない。多分、母のお腹の中に運動神経を忘れて来たのだろう。 運動会の徒競走では万年ビリ。前転させれば右へ左へと行くへが定まらない。球技をすればボールに遊ばれる。勿論、逆上がりなんて夢のまた夢。 学生時代、体操で鳴らしていた鹿江の母は、我が子のあまりのダメぶりに頭を抱えていたらしい。 また、自分の興味を引くものに対しては拘るが、そうでないものには見向きもしないのである。 そして、常人には思いもしない様々な事が鹿江にとっては壁となり立ちはだかるのだ。 それがあまりにバカらしく、滑稽なのである。まさに天才と何とかは紙一重なのだ。
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