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「おかえりー!」
僕は確かに購買でパンを買って教室に戻ってきたはずだった。
それなのにこの状況はなんなんだろう。
足元をぴょんぴょん跳ね回る小さい女の子に絶句しながらその部屋に入る。
リビングだ。
机の上には美味しそうな料理が並んでいる。
ーーどういうことなんだ。
「おかえりなさい」
キッチンと思われる場所から女の人の声がした。
「た、ただいま、です」
「ふふ、なんで敬語なのよ」
笑いながら出てきたのは、クラスメイトの笹倉さん。
エプロンをして、長い髪を後ろで結んでいる。
「さ、笹倉さん……」
「え?……いや、丸井ですが」
笑いを堪えようと必死になっている笹倉さんの横で女の子が不思議そうな目で僕を見ている。
「パパ、どうしたの?」
きょとんとした顔で僕を見る女の子は、笹倉さんにもよく似ていたが、彼女とは違うパーツ……目は、僕と同じ二重をしている。
ーーパパ?
いつ僕は笹倉さんと結婚したんだろうか。
不思議に思いながらも、そういえばそうだった、なんて納得して席に着いた。
「いただきまーす!」
女の子に促されるように、自分も手を合わせて箸をつける……
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