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手を繋いだまま、広場を後にした俺達は何かの建物の工事現場の前にさし掛かっていた。
「何建ててんだろうな…結構高いみたいだけど。」
そう呟き、まあまあの高さまで出来た建物を見上げ、嶺也に視線を戻した。
「さあ?広場も近いし取り敢えずまともなものが建つことは確かじゃないかな。子供だってこの前通ってるのよく見るし。」
「いや、普通そうだろ。誰がこんな人通り多いとこに変なもん建てんだよ。というか、よく見るって嶺也ん家ってこの辺なのか?」
「うん。反対車線の方の道からちょっと奥行ったとこ。紫月さん家に割と近いんで、負担掛かってないから。気にしないでよ、紫月さん。」
そう言って嶺也は微笑んだ。
ギィ…ガコン…
ギギギギ…ブチッ…
ふとそんな音が聞こえた気がした。
「紫月さん危ない!!」
そう言うが早いか、嶺也は俺を突き飛ばした。
「痛ッ…」
何すんだよ、と怒ろうと視線を嶺也に向けた時だった。
不意に、ある曲のフレーズが頭をよぎる。
『落下してきた鉄柱が君を貫いて突き刺さる 』
まさにその言葉通りの事がスローモーションのようにハッキリと見える。
鉄柱が日光を反射し、目が眩んだ。
『眩む視界に君の横顔、笑っているような気がした』
そう、これも同じ。
ただ嶺也は横顔ではなく此方に顔を向け、ホッとした顔で笑い…
あ・い・し・て・る
そう唇を動かしていた。
笑ってるのに…目から涙を流して。
まるでこれが最後とでも言わんばかりに、色んな感情詰め込んで。
数日前に飛鳥が聞いていた曲のフレーズ。
それはある意味予言…基メッセージだったのかも知れない。
周りにいた人が呼んだのか、ピーポーピーポーというサイレンが何処か遠くで聞こえた気がした。
鉄柱が突き刺さった嶺也から赤い海が広がっていく。
「嶺…也?」
ゆっくりと立ち上がり、歩み寄っていく。
「お、おい!危ないぞ!」
誰かが掴んだ右腕を振りほどき、再び歩き出す。
周りの音なんて怖いぐらい聞こえない。
無音の世界で目に映るのは無残な姿の嶺也。
「嶺也…なあ、答えろよ…!さっきの言葉、アレ何だったんだよ…?なあ、なあ…って、聞いてんなら…返事ぐらいしろよ!」
そんな俺の叫びは虚しく響くだけ。
触れた身体は微々たる熱を感じる程度。
ピクリとも動かない…止まらない血…どんどん青白くなっていく…
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