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「俺は人の心が読めるんだ」
俺が、お前はなんでそんなに人に好かれるのか訊くと、九重 大輔(くのう だいすけ)は決まってそう言った。
そんなバレバレの嘘をつくなんて、大輔も正直困っていたんだろう。
そりゃあ、人付き合いがどうして上手くいくかなんて訊かれて、明確に答えられる奴はそうはいまい。人気者はなろうとしてなれるモノじゃない。
俺だってそんなことは分かっていたのに、それでも訊いてしまうのは、大輔のそれは少々度が過ぎていたからだろう。
一度大輔が冗談を言えば、教室内は笑顔であふれた。冷静になれば大して面白いことは言っていないのに、それでも笑ってしまうのは、偏に大輔の人柄に他ならない。
俺達三年A組が、受験を間近に控えても和やかな空気でいられたのは、いつもクラスの中心に大輔がいてくれたお陰だろう。
大輔は、そこにいるだけで人を笑顔にしてしまうような、そういう存在だった。
だから、というのは少々過言かも知れないが、大輔が生徒会長になってから、この学校自体の空気が和やかになった気がする。
大輔は、そんな平和で和やかな学校の、正しく象徴だったのだ。
そんな――――そんな平穏が壊されるなんて。
ましてや、大輔が殺されるだなんて、一体誰が想像しただろう。
俺はこの事件を通して、『人』というものについて――――人のもろさと、恐ろしさについて、深く考えさせられることになる。
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