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親友。そう言ってよ、早坂。
他のどんな言葉も、関係も当てはまらないんだ、僕の中では。
「答えらんねぇの、早坂?」
僕を抱く圭の腕に力がこもった。うつ向いたまま反応を返さない早坂に、圭は「じゃあいいや」と吐き捨てる。
「圭……」
やめて、圭。そんな風に早坂を、置いていかないで。
体を捻り、圭を見上げると、変わらずにまっすぐ早坂を見ている。そして、大きな圭の手が僕の頭をそっと引き寄せた。
圭の心臓の音が、流れ込んでくる。穏やかなのに、強くて逞しい、力のある音。不安ばかりの僕を、やさしく包み込むような、安心できる音。
「じゃあ俺とお前はどうなんだよ、早坂」
早坂の肩がわずかに跳ねた。
そうか、圭がずっと考えてたのは、これだ。
いつも言ってた。「早坂は伊万里ばっかり構う」と、拗ねる圭。僕と早坂が友達だと、親友だとお互いに認めてからも、圭は気にしてた。
「俺と早坂は、ライバルじゃないのかよ」
考えた末に圭が辿り着いたのは、好敵手。ライバル。
"恋人"よりももしかすると、むず痒い響きなのに、圭が言うからだろうな。
自然と馴染む。
ああ、そうだと、納得できる。
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