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「ねぇ、畑田さん。俺が新曲出したら、毎回取材に来てくれる?」
「もちろんですよ!! 桜沢さんが嫌でなければ」
「俺が、全く売れなくなっても?」
「それでも取材します!! したいです!!」
満面の笑みで即答する畑田が、俺のファンでいてくれて本当に良かったと思う。
教師を目指していた畑田の耳に俺の音楽が届いて、畑田の夢を変えてしまった。
だから、畑田が後悔をしない様な曲を創り続けようと思った。
畑田に出会えて、本当に本当に良かったと思うから。
「今度、『君と僕等を、繋ぐ線。』が映画になる事を報告しに、秋の墓参りに行こうと思ってるんだけど…迷惑じゃなかったら畑田さんも一緒に行かないか? 秋に畑田さんを紹介したいんだ」
そんな畑田を、秋にも会わせてやりたいと思った。
「お墓参りの誘いを断る勇気ないですよ」
「別に墓参り断ったからって、祟る様な女じゃねぇっつーの、秋は。迷惑だったらいいって言ってるだろうが」
「迷惑だなんて言ってないじゃないですか!! 行きたいですよ!! 私だって秋さんにお礼言いたいですよ!!」
『行きたい』と言うわりには素直な返事をしない畑田。
何だろう。やっぱり畑田とは、いがみ合っている方が楽しいし、しっくりくる気がする。
「お礼って、何の?」
「だって、やっぱり桜沢さんをまた歌う気にさせたのって、秋さんじゃないですか。私が何を言ってもダメだったのに、秋さんの言葉をヒントに行動したら、歌い出すんだもん。桜沢さん」
両頬を膨らませて、畑田が拗ねた。
どうやら畑田は秋に嫉妬しているらしい。
そんな畑田を、ちょっとかわいいな。 と、思ってみたり。
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