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「仕方のない人ですね」
そう言うと、彼は上体を起こし、額に口付ける。
「一応は信用しますよ。嘘はついていないようですから」
「・・・」
彼はそのままベッドから出て行った。
「あのさ」
それが無性に寂しくて声をかけると、彼は平然と振り向く。
「何でしょう?」
「えっ・・・と。嘘吐いてるかどうかなんて、分かるの?」
「・・・一応、動揺してるかどうかのサインは分かりますよ」
は?
ごまかし半分に言った一言に、思わぬ反撃を食らってしまった。
動揺を隠せないでいる私を見て、彼の口元が弧を描いていくのが分かる。
「人は自分の意に反する行動をしたり、ストレスを感じている時、それが無意識的な仕草となって表れます。そういった仕草が多いときは、大抵嘘をついていたり隠し事をしている時なんですよ」
・・・何、それ
「タチ悪・・・」
そう言いつつも、ふといつぞや聞いた心理学用語『パーソナルスペース』の言葉が頭を過った。
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