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不思議の森は、ファンタジックな設定と妙にシビアな現実が交錯する奇妙な世界。僕はその不思議の森に住むダメダメなゲーム小僧。
現実の世界では仕事と家を往復するだけのさえない毎日。仕事場ではバカにされてるっぽいし身近に友達と呼べる奴もいない。彼女なんていた事もないしどうやって作ればいいのかも分からない。
でも気にしない。
昼間のんべんだらりと仕事をしたら、真っすぐ家に帰って好きなだけゲームをして過ごす。オンラインでゲームの空間に繋がれば、僕は勇者で世界中に友達がいる。
朝ご飯は食べない。昼は仕事場の食堂で食べて夜は家の近くの24時間便利雑貨店でお弁当かカップ麺を買えばいい。ずうっとそうして気ままに暮らしてきた。
だけどある時ちょっと悲しくなった。部屋はホコリまみれの散らかり放題、ゴミの山で、布団は湿っぽくシャツもいつでもよれよれで、病気で寝込んだ時なんて、お弁当を買って来てくれるリアル友もいない。
めったに出かけないので迷子になりつつも、僕はある時森の賢者に相談に行った。
「僕、お嫁さんが欲しいです。」
賢者はお見合いをセッティングしてくれて、小さな羽根のはえた妖精の女の子を紹介してくれたのだが、
「僕の見合い相手がこんなに可愛いわけがない。」
とラノベのタイトルのような事を口走ってしまうほど、妖精ちゃんはそれはそれは可愛いかった。
コミュ障の僕は何をしゃべったらいいのかも分からなくて最初はぎくしゃくしてたけど、妖精ちゃんは僕の様子にお構いなしににこにこ笑いながらさえずるように楽しそうに妖精語でしゃべり続ける。だんだん僕も緊張が取れて来て、ちょっとずつ、ゲームの世界での僕の活躍ぶりなんかを得意気にしゃべるようになって、妖精ちゃんはやっぱりにこにこと聞いてくれた。
なんだか、信じられない。人にやさしくされた事なんて無かった僕は有頂天になってしまった。妖精ちゃんの方も僕を見て、にこりと笑う。
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