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さなぎ
ある日仕事から帰ると、妖精ちゃんが晩ごはんの支度もせずにベッドに横になっていた。具合が悪いらしい。
まあそんな事もあるよなあ。
「僕はお弁当でも食べるから。」と声をかけて、僕はもう一度出かけてお弁当を買って来て、食べながらゲームして、久しぶりに一人きりの時間を堪能した。
しかし翌日になっても、その翌日になっても、妖精ちゃんの具合は良くならず、ある日仕事から帰ると、ベッドにいた妖精ちゃんは、さなぎになっていた。
長い事、部屋がきれいでいつでもごはんが出て来て洗濯物はいつの間にか畳まれてタンスに入っているのが当たり前のように思ってしまっていたけど、妖精ちゃんがさなぎになって3日もすると、部屋は結婚前の散らかり放題荒れ放題のカオスになって、僕はまたよれよれのシャツを着て暮らすようになった。
そして。・・・・ああ、こんな事が信じられるだろうか?
何週間かしてさなぎから出て来たのは、髪の毛ぼさぼさの、シミシワだらけ、この世の何もかもが気に入らないという不機嫌のかたまりのような仏頂面の、ぶよぶよの肉に埋もれた醜悪な生き物だった。
そいつはベッドからどっこいしょと降りると
「何?あんた、晩ごはんまだなの?!お茶漬けしかできないわよ!」と荒々しく言って、こっちの返事も聞かずにさっさと台所に行って調理を始めた。
僕はテーブルについて、茫然と妖精ちゃんのなれの果てを見つめていた。元妖精ちゃんは、これまた荒々しく、お盆からドンドンドンっとお茶づけと、漬け物とか海苔とかを並べて、
「さっさと食べてくれないと片付かないのよね!」と吐き捨て、僕が食べている間中、何だか分からない言葉でぐちぐちぐちぐちとしゃべり続けた。
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