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――じいさん、じいさん、妙齢のご婦人。
何度見てもその顔ぶれは変わらない。
「あらあら、真中君はハンサムねえ」
「まあ、わしの若い頃にはかなわねえけどな」
「ちょっと細いですねえ」
好き勝手を言う「これからの同僚」に愛想笑いを浮かべて、真中秋弘は早くも後悔していた。父親の言葉に頷いてしまった事をだ。
――予想はしてたけど、好みの男一人もいやしねえ。
寂れた小さな遊園地――いや、その規模は公園と言った方がいいかもしれない――の管理人をしている父の代わりに出勤したのは今日が初日だが、予想以上だった。せめて同年代の人がいれば……そう思った時だった。事務所のドアがギイギイと鳴り、背の高い若い男が顔を出す。
「おはようございます……」
低い声の主は秋弘をちらと見て眉をひそめたが、秋弘は思わず手を叩きたい位に浮きあがった。
――やった、若いのいるじゃねえの!
秋弘は精一杯の笑顔で男に声をかけた。
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