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迂闊だった。
まさかあんなに一気に囲まれるなんて誰も予想してなかったせいで反応が遅れてしまった。
「恭弥くん!?」
グラりと倒れ込んだ恭弥くんにいち早く駆け寄った悠。
当然だ。
こんなにたくさんの悪霊に囲まれて僕らでさえ狼狽えてるのに、さらに鮮明に見えて、この霊達の苦しむ声がすべて聞こえる恭弥くんが正常でいられるわけがなかったんだ。
「走れ!!!」
一瞬迷った僕らに悠の怒声が飛ぶ。
恭弥くんの腕を引いて走る悠に続いて僕らも陸に向かって駆け出す。
長くも感じるその距離を走りきり湖の方を見る。
ついてきてはいないみたいだ。
「恭弥!おい!」
焦ったような悠の声に慌てて振り返ると荒々しい呼吸で虚ろな瞳からボロボロ涙を零す恭弥くんの姿。
「まずい……!過呼吸だ。恭弥くん、大丈夫だよ、ゆっくり息をはいて」
肩に手を置いて語りかけるも恭弥くんの呼吸が落ち着く様子はない。
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