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これは、夢?
そうだ、きっと夢だ。
だっておかしいだろ?
夢でもなきゃ南雲さんがこんなふうに俺の名前を呼ぶわけないんだ。
いつもと違って優しくて、でもいつもと同じ大好きな声。
それがもっと聞きたくて勝手に口が動いていた。
「な、ぐも、さん……」
「んだよ」
え、なんで……??
返事が帰ってくる予定ではなかったのに聞こえた声に浮かんでいた意識が着地点を見失ったかのように墜落する。
「な、南雲、さん…??」
「だからなんだって」
思わず目をパチパチと瞬いてしまう。
待てよ、まずは自分の状況を確認しよう。
見覚えのある天井に畳の匂い。
ここは宿だ。そして俺は布団に寝かされている。
そして枕元にあぐらをかいて座っている南雲さん。
「えー……と、俺はいったい……」
橋の真ん中まで行って……そう、悪霊に囲まれて俺は……
思わずブルりと身体を震わせてしまう。
生きた心地がしないとはまさにあんな状況を言うんだな。
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