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瞳を開けると、そこは雪国であった。
という川端康成ファンに土下座して詫びなければならないような雑なパロディからこの物語は始まる。
ちらつく雪が顔に当たり、ほのかな冷たさを感じるなか、体を起こすと視界は五メートルとなく、しかも一面銀世界。突起も窪みも何もない。とかくも白く柔らかそうな平面のみが広がっている。
いったい何が起きてなぜこんな場所に自分はいるのだろうか。
全く見覚えのない光景に困惑し、座り尽くしていると、
背後から静寂を丁寧に破いて女の声がした。
「やっと目を覚ましたかい?」
ぎょっとして俺は後ろを振り返る。無理に体を反転したので背骨が小さな音を立てた。若干のストレッチ効果が得られたがそんな事はどうでもいい。
そこには、頭まで覆うタイプのマント………あれ何て言うんだっけかな………まぁいいか。とにかく雪まみれの黒色のそれを被った金髪の美少女が立っていた。
細かい容姿は後でたっぷり言って聞かせるからとりあえずおいといて欲しい。可愛いからとりあえず美少女なのだ。
一応、念のため、百に一つの可能性もあるかもしれないので、横に鏡餅みたいな顔をしたガキがいないか確認しておく。いない。どうやら彼女は、これから機械の伯爵に撃たれるお母さんではないようだ。よかった。
顔から視線を少し下へ反らす。変なペンダントがかかっている。ってか、ペンダントかなこれ。百均に売ってる紐付きのシャーペンに見えなくもないんだけど。
「それなのに何で目も合わせようとしないんだい?」
美少女は微かに笑ってもう一度問うてきた。酷い言いがかりだ。別に目を合わせる義理もないし、反らしたのではなくずらしただけだ。恥ずかしかった訳でも何でもない。
すると何か?次はお前は「遅い」と怒りだしたりするのか?あっ、さては前世から俺を探しに来たかな?
「これでもできるだけ飛ばしてきたんだけどね」
俺はそういうノリ、嫌いじゃないから乗ってあげる。心が体を追い越してきた訳でも『なんでもないや』。けど、必要ならそういうことにしてあげる。お望みなら何光年でもこの歌を口ずさんでーーー
「えー、はい。新海誠ネタはこの辺にしといて。
待ちわびたよ、主様。ようやく来てくれたね。
さぁ、さっさとこの物語完結させに行くよ!」
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