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さちはキョロキョロと周りを見渡した。
馬が馬車を引いて走り、その道路は石畳。
行きかう人々は質素で地味な服を着ており、道の端には露店、屋台のようなものが並んでいる。
「最近のゲームは凄いね!」
さちは振り返り、そこに居るはずの4人に声をかけた。
「これってゲームなの? ありえなくない? なにかがおかしいわ」
「頭が混乱してきたでごじゃるよ……」
答えたのはちえりとはる。さちの一番仲良くしている親友たちだ。本来は5人グループだが、さちを入れて3人しか見当たらない。
「あれ? みゃんみゃんとりほりんは?」
「近くには居ないみたいだわ」
「そんなことよりも状況が理解できないでごじゃるよ……」
なんとなく呑気なさちとちえりとは異なり、はるは頭を抱えている。
さち達がどうしてこんなところに来てしまったのか?
その理由は誰も知らない。
新しいスマホのファンタジーRPGのアプリがリリースされたという情報を聞いて、5人で揃ってダウンロード。からの、キャラクターメイキング、からの一斉にゲームスタート。
やったことと言えば、それくらいなのである。
「最近のゲームは凄い」とさちは言った。
だが、最近のゲームにはもちろんバーチャルリアリティ―的な機能は搭載されていない。というかそんな技術は未だに開発されていない。
「ちえり殿、拙者のほっぺたをつねるでごじゃる」
「なんで?」
「これは夢なのでごじゃる」
「ああ、そういうことね」
未だ辺りをキョロキョロとしているさちを放置して二人で会話を進める。
ちえりがはるのほっぺたをつねる。
「い、痛いでごじゃる!」
「ということは夢じゃないんだわ。あたしが見ている夢って可能性もあるけど」
「え? どういうこと?」
「だってさち殿。おかしいでごじゃるよ。スマホのアプリでこんな世界に飛ばされるなんて。おかしいと思わないでごじゃるか?」
「そうなんだ。さちはあんまりゲームやらないから」
「そういう問題じゃないでしょ」
「それでこれからどうしよう?」
さちの問いに、
「みゃんみゃんとりほりんはどこかな?」
「二人もその辺に居るかもしれないでごじゃるな」
「探しましょう! あの二人も困ってるはずだわ」
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