小箱の中には

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「イテッ。急に止まったら危ないだろ」  らくだの背の上でつんのめった少年は、コブにぶつけた鼻をさすっている。しかし、らくだは少年の話など耳に入っていない様子で、足元の砂を掻きわけだした。 「何かあるの?」  ぶるんとらくだは答え、器用に足で掘り進めていく。それを上から覗き込むように眺めていた少年が、アッと声を上げた。 「箱だ!」  らくだの足元には、砂にまみれてはいるものの、美しい輝きを放つ小箱が埋まっていた。  少年はらくだから飛びおりて、箱を手に取ってみることにした。砂を叩き落とすと、箱はますます光を帯び、美しい輝きを放つ。 「なんだろ、この箱。夜の星みたいに綺麗な色だね」  力を入れてみても蓋は開かない。どうやら鍵が掛かっているらしい。ブンブンと振ってみたら、中からキランキランカランコロンという心地よい音がした。  今度は優しく箱を振り、耳を近づけて箱から聴こえてくる音に耳をすませた。それはまるで星屑が空から零れ落ちてくるような音だった。 「ねえお前、この中身がなにか知りたい? こじ開ければ何が入っているのかわかるかもしれないけれど」  ぶるんとらくだは左右に頭を揺らした。 「良かった! 実は僕もまだ知らなくていいかなって思っていんだ」  ホッとしたように言い、少年はふたたびらくだにまたがった。 「ほら、お前も聴いてごらんよ」  少年はらくだの耳のそばで優しく箱を振った。らくだはまるで踊るような足取りで砂の上を歩き始める。  キランキラン。カランコロン。  少年とらくだが歩みを進めるたび、宇宙のどこかで小さな星が流れ落ちていくことを、ふたりはまだ知らない。
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