20人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「イテッ。急に止まったら危ないだろ」
らくだの背の上でつんのめった少年は、コブにぶつけた鼻をさすっている。しかし、らくだは少年の話など耳に入っていない様子で、足元の砂を掻きわけだした。
「何かあるの?」
ぶるんとらくだは答え、器用に足で掘り進めていく。それを上から覗き込むように眺めていた少年が、アッと声を上げた。
「箱だ!」
らくだの足元には、砂にまみれてはいるものの、美しい輝きを放つ小箱が埋まっていた。
少年はらくだから飛びおりて、箱を手に取ってみることにした。砂を叩き落とすと、箱はますます光を帯び、美しい輝きを放つ。
「なんだろ、この箱。夜の星みたいに綺麗な色だね」
力を入れてみても蓋は開かない。どうやら鍵が掛かっているらしい。ブンブンと振ってみたら、中からキランキランカランコロンという心地よい音がした。
今度は優しく箱を振り、耳を近づけて箱から聴こえてくる音に耳をすませた。それはまるで星屑が空から零れ落ちてくるような音だった。
「ねえお前、この中身がなにか知りたい? こじ開ければ何が入っているのかわかるかもしれないけれど」
ぶるんとらくだは左右に頭を揺らした。
「良かった! 実は僕もまだ知らなくていいかなって思っていんだ」
ホッとしたように言い、少年はふたたびらくだにまたがった。
「ほら、お前も聴いてごらんよ」
少年はらくだの耳のそばで優しく箱を振った。らくだはまるで踊るような足取りで砂の上を歩き始める。
キランキラン。カランコロン。
少年とらくだが歩みを進めるたび、宇宙のどこかで小さな星が流れ落ちていくことを、ふたりはまだ知らない。
最初のコメントを投稿しよう!