1.Rainy season.

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「吉澤ならそう言ってくれると思ってたよ。 森田先生は第2準備室にいるから、あとは頼んだぞ!」 もやもやと考える蛍の気も知らずに、鈴木は再び暑苦しい笑顔を振り撒いて、蛍の肩を力強く叩いた。 調子良くも鈴木は、要件だけ伝えると蛍との会話を早々に切り上げ、椅子に座り書き物を始めた。 「はい⋯ 」 最後に力なく返事だけすると鈴木には届いていない様だ。 しっかりと会釈してから職員室を出ると、蛍は仕方なく第2準備室へ向かった。 職員室から第二準備室はそう遠くない。 裏庭での出来事や新しい教科担当の手伝いの事、主には文句あれこれを考えているともう目的地だ。 開きっぱなしのドアをノックしてから失礼しますと断り教室に入る。 教科書を持って質問をしている生徒や、何か問題を起こしたのだろう、説教をする先生と様々。 イメージにそぐわない賑やかしさを感じながら部屋の奥まで進んだ。 この第2準備室は常駐ではない先生がメインで使っている。 謂わば第2職員室だ。 奥に設えられた倉庫に、授業で使う道具を仕舞っていることもあり、他の教科の先生からも真面目な印象が付いているらしい蛍は手伝いによく呼ばれこの教室にも来る機会が多かった。 入口に立って教室2つ分程の大きさがある部屋を見渡すと、ひとりで黙々と作業する見慣れないスーツの男性が目に付いた。 彼が “森田先生” だろうか。
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