制汗剤

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「へぇ、好きな女の子いるんだ。誰?」 奏多が少し眉をしかめ、不機嫌そうな表情をした。 それを不思議に思うより早く、奏多の言葉が聞こえてきてショックを受けた。 『好きな女の子』この言葉に、僕が奏多の恋愛対象ではないことを改めて感じさせらる。 動揺に気付かれないように、手をぎゅっと握り締めて耐える。 「......ひみつ」 声が震えそうだったけど、なんとかいつも通りの声で話すことが出来た。 制汗剤は諦めて、この話を終らせようと思ったのに、奏多は追及を止めてくれない。 「可愛い子?」 俯いてしまったけど、辛うじて答える。 「......では、ないかな」 だって、奏多は外見も性格もイケメンだ。 可愛いより、格好いいという表現が合う。 「性格は?どんな人?」 奏多が矢継ぎ早に問い掛けてくる。 とても、不機嫌そうな声音で。 だから、僕はこの時奏多が泣きそうな顔をしていたことには気付かなかったんだ。
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