帰郷

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 駅を降りると祭り囃子の音が聞こえた。  きょうは、狐祭りの日だった。  神社の境内まで行くと、妹がしょんぼりと一人ですわっていた。 A  ほれ、アイス食えよ。一人ぽっちでどうした? B  あ、お兄ちゃん、お帰り。     A  せっかくの祭りだぞ、楽しそうにしろよ。 B  だって、きょうは来られないんだって。がっかり A  そうか。おれも、東京で彼女にフラれた。こんないい男がだぞ。       そのうちに、もっといい彼氏ができるよ。そう、落ち込むなって。 B  はあ!?    お兄ちゃん、なに言ってんの?    ちがうよ、きつねの神輿が今日は出ないんだって!    だから、がっかりしてたの。ふーん、兄貴、フラれたんだ。 A  アイス返せ。 B  あ、友達がたくさん来た!        兄妹の笑い声が、口の中のアイスのように、お囃子の響く空に溶け込んで    いった。
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