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あとから思えば、忍はその時慶太のプロポーズを断っていたのだが、慶太は『慶太のことは大好きだから』という言葉と、頭を撫でる手の優しさにすっかりのぼせ上がってしまい、そのまま20年。
わんこの一念で忍を口説いた。
口説いて口説いて口説きまくった。
毎日、必ず忍のもとに顔を出し、好意を全面に押し出し、尽くして尽くして尽くしまくった。
それでも、弁護士を目指す正義感の強い真面目な忍はなかなか落ちてはくれず。
幾度となく繰り返した慶太の愛の告白を、困った顔をしてやんわりと断り続けた。
大学にいたっては、あろうことか県外に進学してしまい、司法試験を受かり此方に戻ってくるまでの数年間。辛くて長い遠距離片想いを経験してしまった。
(あの頃は、しのちゃんに嫌われたのかと思って、本当にツラかったなぁ。)
なかなか会えない忍に、想いは消えるどころか募るばかりで。
貯めていたお年玉やバイトをやりくりして、追い返される覚悟で忍に会いに行った。
押しかけた慶太に困った顔をしながらも、追い返すことはしなかった忍の胸中はどんなものだったのだろう。
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