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(ま、いまはちゃんと恋人だもんね。
俺の粘り勝ちだっ)
2日前に会ったばかりなのに、もうすぐ忍に会えると思うと鼻歌も出そうなくらいウキウキ気分だ。
(今日はしのちゃんの好きな和食にすっか。冷蔵庫はどうせ空だろうし、なんか買ってこ)
そう考えて近くのスーパーに寄ると店の入口で見慣れたスーツ姿を発見した。
スッと伸びた姿勢にサラサラした黒い髪。
右手に書類が沢山入っているであろう黒いビジネスバッグを持つあの後ろ姿は っ!
「しっのちゃーんっ!捕獲っ!!」
後ろからガバリと抱き着いて、2日ぶりの恋人の感触を確かめる。
「わぁっ!
…なんだ慶太か。ビックリするだろ」
肩に回された腕に手を置きながら、振り向いた忍はいつも通り穏やかで優しい。
(ああ、良い匂い。癒される…)
クンクンとどさくさに紛れて匂いを堪能すると、雄としての本能も刺激される。
(はあ、早く抱きたい)
慶太の邪な想いに気付いているのか、いないのか。
忍は慶太の腕を持ち上げるとスルリと離れてしまう。
「慶太。人が見てて恥ずかしいよ。」
よほど恥ずかしいのか、誤魔化すように口に手をあて咳払いをしている忍は、僅かに頬が赤くなっていて、艶っぽい。
「へへ。ごめんね?」
羽毛より軽い口調で謝り、ニコリと笑えば、忍はフワリと柔らかい笑顔を返してくれた。
(ふふ。平静を装ってるのが、めちゃくちゃ萌えるんだけどっ!
しかもスーツ姿。めっちゃカッコイイっ)
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