30人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
改めて恋人の美しさに見惚れてしまう。
ああ、いま自分がどれだけ締りのない表情をしていることか。
思わぬタイミングで忍と会えて、慶太は嬉しくてしかたがない。
「こんな時間にスーパーにいるなんて珍しいね。俺、いまからしのちゃん家に行くつもりだったんだけど」
さりげなく忍のビジネスバックを持ち、忍を店内に促す。
「ね?何食べたい?時間が遅いから凝ったものは無理だけど。しのちゃんのリクエストはある?」
半歩前を歩きながら尋ねれば、
「食べたいものと言うか…、実は、」
なぜか困った表情をして、忍は視線を店内奥に向けた。
「……げっ。なんでアイツがいんの?」
慶太の眉間に深いしわが浮かぶ。
「夕方、壱琉から電話があってさ。
久々に壱琉の家で呑むことになったんだよ。
駅で待ち合わせて、ここで食べ物調達してから行くことになってて。
俺はいま事務所から電話があって、外に出でたところなんだ」
そう忍が説明する間に、両手に酒と食べ物が入った袋を持った男がふたりの前までやって来た。
「お。丁度いいところに荷物持ちが来たな。
慶太。お前、これ持てよ。」
ニヤリと見下す様な表情と口調。それは慶太もよく知る人物。
幼馴染みの一人、野崎亨だった。
最初のコメントを投稿しよう!