0人が本棚に入れています
本棚に追加
「食えよ」
そう言って差し出されたアイスに、私は驚いた。
だって、私が見える人なんて今まで誰もいなかったのだから。
「わ、私が見えるの?」
「見えるに決まってんだろ。お前、ここの神様だろ。ーーいいから、とにかくアイス食え!溶けちまうだろ!」
「あっ、はい!」
青年が声を荒げたことに驚いて、私は急いでアイスを受け取って口に入れた。
ひんやりとした冷たさと、甘い味が口いっぱいに広がる。
美味しい……!
パクパクと口に運んでいくと、あっという間に無くなってしまった。
「美味かったか?」
「うん!とっても!」
見ず知らずの青年に、私はありがとうっとお礼を言った。
途端、彼はニヤリと笑った。
そして。
「お布施のアイス食ったんだから、俺の願い事聞いてくれるよなぁ、神様?」
「え?」
彼の言葉に、私はその時になって嵌められたことを知った。
そしてこれが。
これから先、長く続く私たちの出会いの始まりだった。
最初のコメントを投稿しよう!