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いつも通り学校に着いて下駄箱を開けると、中に折り畳まれた紙が入っていた。心当たりのないその紙を手に取ったまま固まっていると、後ろから不意に声をかけられた。
「おはよう。どうかした?」
同級生の声に、何でもないよ、と言いながら靴を履き替え、教室に向かう。あの紙は、ポケットに押し込んでおいた。ちょうど予鈴が鳴り始めていた。
「んー、今日もあいつは無断欠席だな。誰か連絡してないのか。」
ホームルームが始まって、担任は面倒そうに声を発した。この台詞ももう10回以上聴いている。いい加減省略してもよかろうに。
クラスメイトも最初は空いた彼の席にちらちら視線を送るくらいはしていたが、今では全く無関心である。まあ仕方ないのだろう。
結局いつもと変わらず事務連絡で担任は去っていく。クラス中に広がる喋り声。彼のことなぞ誰も気にしていない。
後ろからペンで背中をつつかれた。こうやって不意を突くことをするのは一人しかいない。
「おい、さっきの紙何だったんだよ。」
「見てないけど。」
「早く見ろよ。てか俺にも見して。」
へいへい、と適当に返事して少ししわの寄った紙を開く。
「何だこれ、詩か? 意味わかんねえ。」
小学校などでよく見た、よくある400字詰めの原稿用紙だった。そこにまさに小学生の作文よろしく、ひらがなでつらつら書きつけてある。ご丁寧に名前もひらがなだ。
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