Ⅰ.正反対な双子の距離

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「おら、どうしたよ?かかってきや…がっ!?」 安い挑発をする男の腹に、重たい蹴りを一撃与える。 それだけで簡単に男はのびた。 残りは2人。 ちらりと睨めば「お、覚えておけ…!」とお決まりのセリフを吐きながら逃げていく。 「さすが彗!鮮やかな不良撃退劇だね」 その様子を陰ながらに見ていた彗の友人、諏訪部 蓮〈すわべ れん〉が軽口を叩きながら姿を現わせる。 「お前はまた隠れていたのか」 「だって彗と違って俺、不良じゃないし」 「俺だって違うわ!」 そんなお決まりのやり取りをしながら、今までいた裏通りから抜け出した。 俺は桐生 彗〈きりゅう すい〉。 さっきのようによく不良に絡まれはするが、決して俺自身が不良という訳ではない。 ただ、177センチの長身と鋭いつり目が手伝って喧嘩を売られているだけだ。 まぁ、もしかしたらこの真っ赤に染めた髪のせいもあるかもしれないが…。 と、彗は己の姿を省みる。 彗の姿は良くも悪くも目立つ。 顔はまあまあ整っており、黙っていればそれなりなのだが…性格は喧嘩っ早く、売られた喧嘩は全て買ってしまう。 そんなこんなで、自分から喧嘩を売ることはなくとも周囲からは‘‘不良’’と認識されていた。 「ところで、彗。今日ヒマなら遊ばない?」 今は放課後。 特に予定もないし、まぁいいかと俺は2つの言葉で返す。 「それで、どこで遊ぶんだ?」 「あぁ…じゃあとりあえずナンパしよ!」 「却下。それなら俺は帰る」 即座に切り捨て、蓮を置いて歩き出す。 すると慌てたように小走りで追ってきた。 「待ってごめん、ごめん。彗はナンパとか嫌いだもんね~」 「分かってるなら言うな!」 彗よりも1センチ高い身長に、耳には数個のピアス。 肩まで伸ばした金髪は一つにまとめられてはいるが、見るからにチャラい。
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