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卒業式を終えた僕たちは、後輩や保護者や先生が作ってくれた花道を感慨深げに歩いた。
「夏樹、卒業おめでとう」
母さんが涙を浮かべながら手を振ってくれる。
「ありがとう」
僕もちょっとうるっとしながら、手を振り返した。
保護者は帰り、卒業生は後輩や同級生たちとそれぞれ最後の別れを惜しんでいた。
「夏樹先輩、卒業おめでとうございます」
僕の前で泣いているのはテニス部の後輩たちだ。
男子テニス部は人数がそんなに多くなくこじんまりしているからか、部員同士の仲がよく、学年関係なく遊びに行ったりもする。
今年の卒業生は僕を含めて5人で、僕たち5人を囲んで後輩たちが泣いてくれてるんだ。
テニスが上手いわけでもないのに、僕は何故かキャプテンをしていた。
夏に引き継いた時に『自信ないです』と不安そうな顔をしていた後輩は、半年たった今では堂々とた立派なキャプテンになっていた。
「あ、中司(なかつかさ)先輩も来てくれてるんですよ。会いましたか?」
「中司先輩が?会ってないよ」
卒業生5人で顔を見合わせるけど、みんな知らないと首を横に振った。
「あれ、先輩どこに行ったのかな?」
後輩たちも首を傾げている。
「ま、いいか。先輩方、大学生になっても練習見に来てくださいね」
「「もちろん」」
僕たちは答える。
「写真撮りますよー」
僕たちは写真を撮ったり、ハグしたりした後、名残惜しげにお別れした。
「さて、帰ろうかな」
美夏や櫂とは約束していないので、僕は一人で校門に向かった。
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