92人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
――午前八時。
昨日通ったばかりの山道を行く三人と一匹。
先頭を歩くのは勿論、篠宮さんと社長で、間に濱さんを挟み私という形だ。
獣道を下ったところにテープで仕掛けられた小型カメラを外し、篠宮さんは言う。
「ルーフ君がこの先のどこかにいるのは間違いないので、そこからは匂いを辿って行きます」
「匂いを?」
訝った濱さんの言葉に、社長が尻尾を振り「任せとけ」と言わんばかりのえへ顔……いや、笑顔を向ける。
爽やかな森林の空気と小川のせせらぎをよそに、私たちはルーフ君の消えた川上へと歩を進めた。
最初のコメントを投稿しよう!