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「なんかよく分からないけど、気になって」
なんとなくとか、よく分からないとか。宮元先輩の言葉はひどく曖昧なものばかり。なんだろう、これって……。
あ。
「感覚ですか?」
「え?」
「感覚でキス、したんですか?」
感覚なんて女的で、リアル重視の男には理解できないと言っていた宮元先輩が。
「あぁ、もしかしたら、そうかも」
先輩も自分の言葉を思い出したのか、少し笑った。
「ただ、その時、思ったんだよ。もしかして、わざわざ俺のためにのど飴用意してたんじゃないかって。これ、独特の味するし、あんまり売ってないし」
それは確かにそうだけど……。
「だから、次の日も確かめたんだ。予想が正しいか。あんなこと練習で毎日するわけないじゃん。キスシーンはいくら何でも遥に文句言うよ」
じゃあ、火曜日はなんとなくじゃなくて、先輩の意思?
お芝居の練習じゃなくて、誰かの代わりじゃなくて、私に対して、キスしてくれていたということ?
落ち着いたはずの鼓動が、また高鳴るのを感じる。
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