134人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
「アキラ君?」
「違う」
「宮元先輩……?」
「それも違う。俺の名前、呼んで」
「翔平、君……?」
「なんでかさ、最近レナといるとアキラのあの感覚、分かる気がする。悔しいけど、遥の本、間違ってないのかも」
そう告げると、先輩は私を抱きしめ、優しく口付けた。それは今までしてきたキスが全部入っているようなキスで、角度を変え、深さを変え、何度も何度も繰り返す。
これは、愛しいキス、そう思ってもいいの?
そして、深い深いキスのあと、そっと離れた。
「それも演技ですか?」
ちょっと照れた先輩のその顔は、どう見ても素の表情だったけど、恥ずかしいのと強がりとで、ついそんなことを言ってしまった。
すると先輩は小さく息をついて「いつも無反応だったくせに」と呟いてから、ゆっくりと意地悪な笑顔に変わり、私の耳元に顔を近づけた。
「分かるまで続けてみる?」
言葉が終わると同時に再び口が塞がれ、何も返事ができなくなってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!