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やっぱり、そうだった。
到着したのは、あいつが通っている小学校だ。
夏休みでよかった。
見つかる可能性は低い。
「さてと、ちゃっちゃとやって、帰ろうぜ」
さっきまで、あんなにやる気のなかった、藤原さんがバンから作業道具を下ろしだす。
俺も車から降りる。
瞬間、もわっとした生温かい空気に襲われる。
怪獣、もわもわ。
腹に、一瞬パンチを食らわせてみるが、効き目なし。
今日も一日、こいつに飲み込まれたまま作業するのか。
「徳さん、今日って、何日だっけ?」
運転席から降りた木村さんが、不意に尋ねてきた。
「8月22日…」
答えて、思い出す。
あいつと初めて会ったのは、3年前の今日だ。
ということは…
「8月22日、と。ちょっと、職員室に顔出してくるから」
木村さんは、書類に日付を記入して、小学校の中へ入っていった。
蝉の鳴き声が、こめかみをつき刺して、びりびり頭を響かせる。
その響きに混ざって、校庭で走り回る子供達の笑い声。
ひとりの男の子が、転んでしまう。
思わず、自分の足が一瞬動いた。
「大丈夫かよー」
友人たちが気づいて、彼に駆け寄って行く。
校庭の砂埃が舞い、太陽が光が反射する。
きらきらと、少年達の姿がぼやけていく。
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