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見れば見るほど間違いなく、べろんべろんに酔っている。
それは確かだけれど……僕が話を振った途端、彼は生き生きとした酔っ払いに変貌した。
「あと、客相手には完璧な営業スマイルなのに、俺には急に不愛想になったりするとこもかなりツボっすね、気を許してもらってんのかなって。だから俺、慎さんの仏頂面も大好きっす。
それから、結構拗ねたりヤキモチ妬いたりする方なのに、隠そうとして隠しきれてなかったりとか、かくれんぼして尻尾が見えてる猫みたいっすよね!」
「ね、って。それ、僕の悪口だろう! どう聞いても悪口にしか聞こえないんですが!」
不愛想やら仏頂面やら僕の可愛げのないところばかり吊し上げては、嬉しそうに可愛い、好き、を連発する。
挙句の果てには間抜けな猫に喩えたりしながら、「ね!」と同意を求められた。
「く…………ぶはっ! くくく」
「……佑さん、笑い過ぎ」
カウンターの中で大うけしている佑さんにも、陽介さんは全く気付いてないらしい。
とろん、とした目で僕を見ると「うしっ」と何故か気合をいれて、漸くモヒートを飲み干す。
そしてまた、僕の可愛いと思っているらしいところを暴露し始めた。
「それから、言葉遣いが時々ぽろって、擬音? 擬態? 語? ほかほかとか、まあるくとかやわかいとか、堅苦しい敬語なのに、そういうのが混じるとこも可愛くて。くるくるー、とか。あと」
「……まだあるんですか、僕の悪口は」
恥ずかしすぎて、聞くに耐えない。
まるで拷問だ。
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