多分トモダチ? と多分恋バナ

31/34
463人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
『焦らなくてもいいと思うけど、どうしてもっていうなら』 翔子さんが話の中で、言っていたことが頭を過る。 『陽ちゃんのすることの、ほんの少しだけ、神崎さんから進むようにしたら?』 『ほんの少し! すこーしだけね』 ……少しだけ。 先を、行く。 気が付くと、僕は陽介さんのジャケットの合わせを握りしめていて。 背伸びをして。 「え」と目を見開く陽介さんと視線を合わせながら、唇にほんの一瞬だけキスをしていた。 乾いた唇が触れ合うだけの、何の潤いもないキスだけ。 すぐに離れた僕に陽介さんの反応が乏しくて、不安になって表情を窺うと、驚いた顔のまま固まっていた。 「べ、別に……キスくらい。貴方は少し、僕に気を遣い過ぎだと思って」 「ま、慎さん……」 「それくらい、いちいち確認とらなくても」 いいです。 と、言い切る前に、再び唇は合わせられた。 今度は、陽介さんによって。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!