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見えないままさらに時間が流れる、そこまできてようやく異常に気付く。
晴れるはずの霧が一向に晴れないのだ。これは自然の霧ではないと確信した。
「これが異なる力か。面白い」
魔法の霧ならば各所でディスペルされてしまっているはずだ。
対処不能。これがルネーシャ地方の特性ではないのは解っていた。何せデュラハンは近隣で生を受けて過ごした経験を持っている。
「朝っぱらから何を騒いでるんだか。ねぇ」
寒い寒いと呟いて外套にくるまりアンジェリナがヘンリエッタと共に現れる。
「異変が起きているようですわね」
軍が居る場所だけ濃い霧が立ち込めている。城は全くそんな気配はなく、山の裾野も全然だ。
かといって混乱はしても兵を減じる程のことではない。
司令部はきっと固守して妄りに動き回らないよう命令を発しているだろう。
「これだけでは逆転の一手にはなりませんけどね」
冷静に待つ、それだけで良いのだ。
「ほう、これは見ものよ」
霧の中に突如竜が出現する。白い巨体が上空を舞って唸りをあげた。
ミストドラゴン。かつて霧の街を守護していた竜だ。
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