カルテ1ー3

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聞こえはいいかもしれない。 ボスだけ、とか。 スッゴい長い時間想い続けてる、とか。 んな訳ない。 私はロクでもない人間なんだ。 ボスに飼われたのだって、当時はそれで仕方なかった。 ただ、それが元でボスの人生を狂わせたのかもしれない。 私は返しきれない恩がある。 それを彼はひと言も口に出したりしない。 どう思っているかさえ分からない。 「ボス、食べないんですか?」 今更、それを聞いてどうなるんだっつーの、ぐらいの笑い話だ。 いや、内容は笑えない。 笑いなんてイチミリだってない、エグくてシビアな話だ。 「あー、ザブトンは食おうかな」 「友三角は?」 「なんだ、食って欲しいの?」 「だって食べきれないかもしれないし」 お肉は私を裏切らない。 だけど、食べ過ぎると…… 私の方が飽きちゃうんです。 「食いきれなかったら食ってやるよ。 ……残らず」 「一緒に食べてくださいよ、私一人がタカってるみたいじゃないですか」 変わらずマイ皿に投入されるエンペラーブリアンはほんとに贅沢の極みだ。 それをボスにはヒトキレさえも与えずに完食した私に 「タカってるだろ、完全に」 そう言って、微笑みながらなおも肉を焼き続けるボス。 知ってる男は、ボスだけだけど 愛していたかと言われたら それは、定かでは、ない。
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