カルテ10

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「ドナー心、15分後に届くとの連絡入りましたー」 「はやっ」 「早いな!」 やっぱり。 じゃあ、陣内がそのままこっちもやりゃいーじゃん。 と、思ってしまったのは 私だけだろうか。 「ヘパリン」 「はい」 「送血管挿入します」 「有馬、手際いいな。 どっかで、やった?移植」 「は?」 ええ、ええ、そりゃ何度も。 とは、言えないからだ。 だって。 日本で心移植なんて、年間で何件?数えるくらい。 それを1年で倍の倍はこなしましたぁ、なんて…… 「いえ、なんとなく、予習しましたから」 「そ」 「先輩は?向こうで確かあるんですよね」 「まぁ、助手だったけどな」 体外循環が順調に開始される。 「三原、どう?」 「……無問題(モーマンタイ)」 「大動脈、遮断」 メスが走るスピードは速くはないが 丁寧だ。 「右肺動脈、気を付けてください」 「オッケ」 「肺動脈、切離します」 「頼んだ」 扉が開いて、なんだか見知った顔が飛び込んできた。 勿論、白衣に身を包んだスーツ姿の2人。 白石のところにいる所謂“運び屋”。 まだ健在だったのか、とちょっと懐かしかったりする。 私が切り取ったモノを渡して 持ってきたモノを受け取っていった人だ。 ふーん。 バックを担いだその人が私にペコリと目を伏せた。
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