最悪と最愛

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「勘違いしているようだけど、僕達はまだ付き合ってない。今、必死で彼を口説いている最中でね。邪魔しないで貰えないかな」 えっ?と、彰兄を見上げれば、優しい眼差しが見つめ返して来た。 「君が振ったのか、広大が振ったのかは分からないけど、二人は別れたんだろ?」 問い掛ける声に、俺は頷いた。武蔵はどう思っているのか知らないが、俺の中では終わらせた恋だ。あいつのセフレになるつもりはない。 「だったら、君には関係のない話だよね。もう2度と広大に関わらないで貰いたいな」 彰兄はキッパリと言い切ると、何の躊躇も戸惑いもなく、俺を自然に抱き寄せた。 武蔵が凶悪な目を更にキツくして彰兄を睨む。でも、彰兄はどこ吹く風で受け流していた。 ◆ 車に乗り込むと俺は、彰兄に向かって頭を下げた。 「ごめん、彰兄。嫌な思いさせて」 「・・・趣味が悪い」 剣を含んだ声音に責められていると感じ、俺は俯いた。車に乗り込むまでも、彰兄はずっと無言で、話し掛けることを拒む素振りをしていた。 「うん・・・俺もそう思う」 「好きだったの?」 「・・・うん」 「今は?」 「えっ?」 顔を上げると、真剣な眼差しとぶつかった。
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