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看護師に案内されてナースステーションに入って待っていると、担当医がやってきた。担当医は、パソコンのディスプレイに母の胸部レントゲン写真を映して説明を始める。
「ここと……ここ。見えますか」
「はい」
「こっちはステージフォー。こっちはステージスリーです。MRIの画像検査から複数の転移も見つかりました」
私は耳を疑った。
「先生、それって……」
「肺がんです。もって、あと三か月でしょう。私はご本人に告知しようと思うのですが、あなたはどう思われますか?」
◇◇◇
「あたし、体がもつ限り、あの交差点に立ちたいのだけれど、いいかい?」
母がそう私に訊いた。私は母の体が心配で、到底受け入れられないと思ったけれど、どうしてもという母の願いに押し切られた。
「その代わり、私も付き合わせてくれる? お母さんの体が心配だし、それに娘の果乃もその方が喜ぶと思うから」
母の心の中で、どのような事態が起きているかなど、私には想像もつかなかった。死の宣告を受けたにも関わらず、入院を取りやめ、通院で放射線治療を続けながら、交差点に立つというのだ。
でもきっと、死の縁に立って初めてわかる何かがあるのだろう。私はそう思い、何とか気持ちを切り替えた。
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