【606号室 片桐 稜(かたぎり りょう)】

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「ほら、飲め。俺ももらうから」   その横に水を注いだコップを置いた伊崎に、 「ねぇ、伊崎。パソコン得意?」 と聞いてみる。   自分のコップの水を一気飲みした伊崎は、「あ?」と言って、私の視線の先のパソコンを見た。 私はよろけながらベッドから下り、テーブル前のクッションに座る。 そして、フォルダを開き、作成途中の表を表示させた。 「おいおい、会社のだろ? 守秘義務守秘義務」 「ただのフォーマットだから大丈夫だよ。てか、ここに打ち込んだ数字をここに反映させた上で、このシートとこのシートにも飛ぶようにしたいんだ。そんで、こっちのグラフには……」   顎に手を置きながら無言で聞いている伊崎をいいことに、私はベラベラと話しながら人差し指で画面を指す。 そして、ひと通り話し終えると、私の横から画面を覗き込んでいる伊崎の顔を見た。
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