【606号室 片桐 稜(かたぎり りょう)】

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「おい、だから飲み比べなんかしねーっつっただろ。重ぇんだよ、お前」   結局、会計は伊崎持ちだった。 千鳥足になってしまった私の腕を肩にかけて支え、ようやく自分の部屋に送ってもらったところだ。 私の部屋には何度か入っている伊崎は、当たり前のようにベッドまで運んでくれる。 「サンキュー。愛してるよ、伊崎」 「はいはい。俺も愛してるよ」   冗談を交わして手を離した伊崎は、「あー、疲れた」と言って伸びをする。 「水あるか? 冷蔵庫開けるぞ」 「どーぞー」   前回以上に酔っぱらってしまった。 でも、フワフワして心地いい酔いだ。 私は寝返りを打ってテーブル側に体を向ける。 「あ」   テーブルの上には、ノートパソコンが置きっぱなしになっていた。 スリープ状態で真っ暗だけれど、開いたままの黒いディスプレイに私の影が映る。
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