【606号室 片桐 稜(かたぎり りょう)】

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「ふーん、ちょっと複雑な関数入れないとな」 伊崎は、ほんの少し伸びたヒゲをさすって頷き、顔を後ろに戻す。 「できる?」 「できるよ」   そう言って私と交代でマウスに手を置いた伊崎は、今私が詰め込んで言ったばかりの指示を、ものの数分で片付けた。 覚えようにも速すぎてついていけなかった私は、瞬きをしながら「マジかよ」と呟く。 「え?」   同時に“保存しない”を選択して、完成した表を即座に閉じる伊崎。 「おい、何して……」 「なんとなくわかっただろ? あとは自分でやれ」 「は?」   伊崎は、「ちょっと待ってろ」と言って、部屋を出た。 そして、隣の自分の部屋からなにかを取って、また戻ってきた。 音でわかったけれど、その間わずか1分。
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